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JFDR『 White Sun Live.』リリース記念特別ライブ・レポート

 アイスランド現地に出向いて音楽シーンと関わるようになって15年以上になる。その間、あ〜この子は絶対に何かになる!と思わせてくれたのが数名。本当に数名。その中での出世頭は勿論アウスゲイル。音楽の世界ではなく女優か何かで傑出するかと思っていたのが先日日本の夏フェスで演奏したドリームワイフのヴォーカル、ラッケル。シーベアーのグループからはシンドリとソーレイ(どちらも来日してもらったことがある)が出現し、ロウクロウはヒルドゥルが近年ソロで絶好調。
 そして14歳でのデビュー初ライブから見守っているのがヨフリヅル子と私が呼んでいるヨフリズル・アゥカドッティル。アイスランドあるあるで、私は彼女を知る前に、現代音楽作曲家でエクスペリメンタルなことをやっていた彼女のお父さんを知っていた(ことを後日に知る)。

 彼女は双子の姉妹と同級生の友人とでパスカル・ピノンというグループを組みアイスランド・エアウエイブスでデビュー。日本をツアーして回ったことも。次にサマリスというトリオを組み、ビョークと同じOne Little Indianからもアルバムをリリース。それが一段落すると、次はJFDR (ジェイ・エル・ディー・アール)というソロプロジェクトに取り組み、その第一弾が去年発表したフル・アルバムの『Brazil』。

 私はストリングス・ヴァージョンの演奏を、実は去年のアイスランド・エアウエイブスでの教会ライブで見ていたとはいえ、その時よりもよりいっそうヴォーカリストとして、パフォーマーとして成長していた。彼女はここ数年間拠点としていたニューヨークから数ヶ月前レイキャヴィクに戻り、どことなく都会的な洗練味が増したような気がした。以前からの清々しい雰囲気は変わらないが、歌唱のニュアンスにどことなく都会的なものを感じた。レイキャヴィクのシーンの中で、そしてツアーでも友人に囲まれて過ごす環境から離れ、見ず知らずの人々が行き交う中での刺激や孤独も知り、そこで一層自分の軸を磨き、その上で醸し出されたのが今回のライブのヴォーカルだった。
 


 姉妹であるアススヒルドゥルのピアノは派手でも滋味でもなく、ところどころに耳に残るフレーズやハーモニーをつまびき、基本ミニマルなところはギターのアルバートと同じで、ストリングスがバックの要であったことは揺るぎないが、アルバートとアススヒルヅルのミニマルながら心を動かす演奏が、とてもいいスパイスになっていたと思う。

 つまりは非常にいいライブだった。ヨフリヅルの歌唱は魅力的で、一瞬一瞬の息づかいを聞き逃さないようにと、会場は常に静まりかえり(アイスランドでは珍しい!)、美しい弦楽器の演奏も華美にならず、そこに時にノイズをアンビエントにかませるギター音響とピアノのハーモニーが加わり、それはそれは息を飲むような美しい瞬間がいくつあったことか。それは結局、JFDRのアーティストとしての成長が周囲のメンバーを刺激し、ヨフリヅル自身も周囲からしっかりと支えられていることを自覚し、ありきたりな言葉ではあるけれど、全員の心がひとつになり、素晴らしいハーモニーを奏でていた。

 ストリングス付きのライブは特別な機会ではあるけれど、彼女はアルバートだけをバックにツアーすることもあり、実はそれがとてもミニマルで美しく、ヨフリヅルの雰囲気にぴったり。来年2019年の春頃、もしかしたら来日する機会が作れるかもしれないので、ぜひご注目を。きっとヨフリヅル子がアイスランドの清々しい空気を日本へ運んでくることだろう。(小倉悠加/ Yuka Ogura)

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