ミシュラン星きらめく、新生DILLのアイスランド懐石グルメ

 今回は以下のツイートに関しての話。

 前置き、少し長いです。面倒な方は読み飛ばしてください。要は美味かった!

 初めてDILLというレストランで食事をしたのは、確か2011年だった。ノルディック・ハウスにオープンして数年目のことで、評判が評判を呼び、短い旅行日程の中で夕食を確保することができず、ランチに甘んじたものの、そのレベル違いの味付けに唸ったことを今でも鮮明に覚えている。

 2度目は2年ほど前のこと。ミシュランの星を獲得し、メイン・シェフがニューヨークのレストランに引き抜かれた後のこと。ロケーションは街中に移っていた。とても楽しみなディナーだったが、どうも違う。何かが抜けてる。「この店、ミシュラン星は無理かもよ」と素直な感想をその場で彼に伝えたし、星を落とした時は「君が言ってた通りだね」と。そして気づくと、やはり同じことを感じた人が多かったのか、店が閉鎖された。

 高級レストランはその後、新生のNostraに期待をかけ、ミシュランは彼らをすぐにお勧め店にしたけれど、時すでに遅し(?)で、公認された直後、閉店の憂き目にあった。多分、最初から飛ばしすぎて、採算度外視過ぎたのではと思う。

 私はとても高級志向の食通ではない。けれど、どうやら日本という国に生まれ育ち、それなりに時々あちこちで外食もしたことがあり、多分、日本人というのは味覚に敏感なのかと思う。一説によれば、出汁の旨味を感じ取れるのは、日本人と世界の一流シェフだけだとか。そこまで買いかぶりたくもないし、ましてヨーロッパの最貧国であったアイスランドの食生活を見聞きした程度では結論づけられないが、ある程度その傾向はあるかと思う。何せ、魚介の出汁に関しては、私が言う事は細かい(ようだ)。細かいというか、出汁が足りないとか、出汁が濃くて大変によろしいとか、そういうことを言う。多分外人には何のことやら?かもしれない。

 アイスランドに来てグルメっぽくなってしまったのは、日本のように飲食店が豊富ではなく、正直なところ選択があまりない。たまに来る国なので、1-2度はラム・スープで十分だと思うし、それも旅行の醍醐味かと思う。けれど、ここに在住するとなると、毎回ミートスープでは味気なさすぎる。そして日本からのお客様から、「地元の美味しいものを」と指定されると、期待されるレベルによっては選択がない。ここぞ!という店が存在しないからだ。

 それで、今回彼が万を辞して私を新生DILLへ連れて行ってくれた。コロナの影響で週一日中のみの営業。1日二回転のみ。メニューは20品のワンコースのみ。20品と言っても、一口のごく小さなデザートのキャラメルやチョコレートも一品に加えられる。それでも、品数が多くなれば結構お腹も膨れるし、途中飽きることも出てくる。

 前菜として出された野菜の切れ端のコンソメ、発酵ニンジンを飾りにした炒めオニオンのマフィン、乾燥魚のフレークをかけたハーブ入りのバター、海藻入りのチップス等々、最初の1-2品からすぐに、前回のDILLとはレベルが全く異なることを確信。と言うか、やはりメイン・シェフが抜けたDILLはレベル落ちしていたことを改めて認識。

 前菜の後の野菜の数品、次に魚の数品、最後のメインとして肉の数品。どれも見た目、味、質感等に十分こだわり、細部まで考えられていたことがわかった。こういう店にありがちな、少々凝りすぎなところはあるけれど、日本のような素材の力を引き出す出しの使い方ができる素材自体に欠ける事は承知なので、ここまでよくぞやったと思えた。

 私の中でのヒットは、野菜コンソメ(つまりは西洋出汁)で大根の甘味を更に引き出し、そこにタラの卵巣の燻製を入れたものと、セロリのシャーベットだった。英語でもアイスランド語でもタラの内臓としか書いてなかったが、カラスミを知る日本人なので、すぐに卵巣を塩漬けにして乾燥させたのだろうと察しがついた。

 アイスランド国産素材に拘ったDILLの20品。全ての素材が国産という訳にはいかないが、とても斬新で味覚のエンターテイメントだったし、見た目も悪くなかった。世界スタンダードなので言うまでもないが、懐石に影響を受けたであろう事は、ありありと出ていた。

 

 なのでDILLは自信を持ってお勧めします。かなり前から予約しておくのが無難。現在の交換レートであれば、食事が一万円強、何倍かお酒をいただいても、一名2万円で収まる。満足度は高い。