Matur og Drykkur 懐かしの料理本を現代に蘇らせるレストラン

 アイスランドに移り、現在のパートナーと一緒になってから食べ歩くようになった。とはいえ、レイキャビクは小さな街なので、東京のような食べ歩きは無理。そして外食は(我々には)高いから、何かきっかけやら言い訳がないとなかなか外食に出ない。そして栄枯盛衰も凄くて、今年に入り数多くのレストランが崩れ落ちていった。そういったレストランのリストはこちら

 レイキャビクのレストランの質はまちまちだ。どこの街でもそうだろうけど。TripAdvisorやGoogleの評価も鵜呑みにはできないし、その日のレストラン側の態勢や、食する自分の体調も影響してくる。毎日の変動要素が大きいから一筋縄ではないけれど、それでも少しは参考になるかもなので、これからはなるべくレストランの話をお裾分けしていこうと思う。

 今回行ったのはMatur og Drykkur という振興の港のエリア、グランディにある店。店名は、アイスランドに初めて花嫁学校(と訳していいやら?)を設立したHelga Sigurðardóttirが1947年に執筆した『Datur og Drykkur (食事と飲み物)』という本からとったもの。この本のレシピを参考に昔のアイスランドの料理を、元魚工場だった場所で提供するというコンセプト。

 店内の雰囲気はごく落ち着いていて、高級レストランというより、街の食堂っぽい風情さえある。けれど、壁のアートや照明器具を見ると、なるほどきちんと考えて、コンセプトに基づいていることがわかり、単なる街食堂でないことがわかる(アイスランドには街食堂がなくて、あえていえばハンバーガー屋か)。

 今回はOffer.isの半額クーポンを利用してなので、選べるのはお試しメニューに限られる。お試しできるのは陸と海があり、私たちは陸を選んだ。一人一人個別にメニューを選べたそうだけど(お試しメニューはテーブル全体で同じものを出す場合も多い)、海より陸の方が面白そうだった。

 一品目の前菜は見た目も素晴らしく、アイスランドで食べた中でもピカイチくらい個性があった。野菜の甘みや酸味は素材の持ち味の主張があり、チーズはクリーミーでもさっぱりしていた。特筆したいのはコリアンダーシードで、味にパンチがありとってもよかった。カリッと焼いたグラノラが歯が欠けそうなほど固すぎたのはご愛嬌。またはかつてのアイスランドではこの位硬いのが普通だったのか。

 二品目のラム&ブルーチーズ・コロッケのルバーブジャム添えはまぁまぁかな。ルバーブの甘酸っぱいソースがなければ、ごく平凡なコロッケに終わってたと思う。特にブルーチーズのブルーの香りが消えてしまっていて、クリーム感しか残っていなかったのが残念。アイスランドのチーズは全般にクリーミーで、ブルーといってもクリーミー感が勝つ。この品では、ブルーの癖が残っていた方がおいしかったのではと思う。ルバーブの甘酸っぱいジャムとの組み合わせは優秀。少食の私には量が多めで、この品を完食すると後が続かないだろうと思いながら食べた。

 三品目はラム・スープ。スープというよりラム汁。野菜のエキスがコンソメで、肉のエキスがフォンドボーなら、ラムのそういったエッセンスの詰まったスープ。つまりは肉は入ってなくて、汁のみ。これは初めてだった!ラム臭が若干強いし、スパイスが効いて結構塩辛い。それをポーチドエッグの半熟トロトロたまごで中和する贅沢。卵の下にはターニップと人参の茹でたものが隠されていて、穏やかな野菜の味もスパイシーなスープのいい対比となった。これはあっぱれの一品。もう一度食べたい。

 次はお口直しのレモン・シャーベット。糖分をごく抑えてあり、レモンの香りと酸味、苦味が中心。写真では見えないけどこのソルベの下に甘酸っぱいルバーブのシロップが隠されていて、混ぜれば甘酸っぱさも強調され、いろいろな味に調節できて楽しい。お口直しはほんの一口が多いけれど、この店のお口直しはがっつりの量。

 メインのラム。夏に放牧した羊はすでに農場に集められ、肉になるべく羊はほとんどそのようになっていることと思う。そんな時期(というかほんの2週間ほど前の9月下旬)私は3日間続けて外食し、ラム肉を食べ続けた。で、その結論が「今年のラム肉、めちゃうま?」。信じられないほど柔らかく、肉の味がしっかりしていて、今までに食べたことがないほど最上のラム肉が3日間、異なるレストランで出てきた。もちろん、安くない場所ばかりなので、いい肉が提供されていると思う。だからこそ選んだラム!今回のラム肉も超期待!

 という期待のもとに運ばれてきたラムは、見た目「ちょっと焼きすぎ?」。美味しいラム肉はレア気味でちょうどいい。中はレアな部分もあったけれど、周囲は焼きすぎかな。ナイフの刃のギザギザが大きいせいか肉が切りにくい。そして一口肉を含むと、ん?内臓っぽいレバー臭が。レバーは好きだけど、メインの肉にレバー臭がするのは苦手。ソースも野菜のピューレも申し分ないし、特にカラメライズされているようなポテトはとてもよかった。再度ルバーブも登場したけど、ルバーブはアイスランドの、今の時期ならではのものだしいいんだけど、何せ肉自体が・・・。この日の料理の中で一番普通というか、調理法が気になる一品だった。

(三切れあった肉の塊のうち、彼も私も一切れのみ食べてあとは持ち帰らせてもらった。翌日の夕方、冷たいまま薄切りにして、あったかい野菜と共にいただいたところ、そこそこ美味しかった。レストラン残りもの持ち帰りあるある。そして残念ながらやはり肉は若干焼きすぎであることを確認。肉は形が均一ではないから端が焼けすぎになるのは仕方がないとしても、やはりもう少しオーブン内での時間を短くして低温保持を長めにすべきだったかな。)

 そしてデザートが運ばれる。デザートといえば、婦女子が一番気にするでメニューではないか。スイーツでその店の評判が決まるのかと思うほど、メイン並みに力をいれるレストランも少なくない。なのに、なのに・・・・運ばれてきた時、正直なところ信じれなかった。チョコレートスキールだというけど、これ、ぐにゃっと絞り出しただけで、何やら同じような色の臭いもの(つまりはウ○コ)を思い浮かべる風情。これはないっしょ。

 いかにシャーベットが美味しくても・・・。そしてまたシャーベット?!食材のルバーブが重なっても気にしなかったけど、全品に出てくるのはどうかと思うし、スキールが重いから上はシャーベットというのも解せなくはないけど、でも、もう少しなんとかなりませんかね?!プレゼンテーションとしても、例えば上に少しだけ赤い実でも、ブルーベリーでもいいから載せたら?という至極洒落っ気に欠けるものだった。味以前に、学校のカフェじゃないんだから!というところかな。
結構な量の食事の後、昔風の重い舌触りのスキールをこれだけ大量に出されても飽きるし、イマイチ感が拭えない。見た目からして拍子抜けのレベルなので、なんのことやら?と半ば冗談にできるほど。

 前菜がとてもよく、詳しく書かなかったけどノン・アルコールのカクテルもとても私好み(=甘くない)で、スープの次のソルベまでが非常によかっただけに、尻窄み。それが「伝統」というコンセプトだったのか、単にパティシエが休みの日に当たったのか、何かわからないけれど、私には理解できない展開となった。だからといってこのレストランはよくないというつもりはない。特に前菜から判断すれば、そこまで飾りつけができるのに、デザートでなんで?という疑問がありすぎて、摩訶不思議。

 それから、このレストランの名物は鱈の頭なのだそう。私たちがいる間も、何やら炎を上げて提供されていたものがあったので、何なのかと尋ねると、鱈の頭(cod head)であるという。それが気になるので、また行こうか?という話にまでなっている。

 今回いただいたお試しメニューの陸コースは一人前約1万円。アイスランドでは普通の値段だけど、安くはないので、今回はクーポンを利用。一人5千円なら物凄く安い。
ちなみに、今回の外食は、先日私の仕事を彼に手伝ってもらったので、そのお礼でもありました。

Matur og Drykkur
http://maturogdrykkur.is/en/