会員制、倶楽部ICELANDiaは2024年春に始動!

回顧録:2003年アイスランド・エアウエイブス見聞記パート1

 2019年追記:あまりにも懐かしいこの文章。当時のアイスランド音楽シーンの雰囲気が結構わかるかと思うので、レイキャビクの音楽シーンに興味ある方はぜひどうぞ。思い返せばこれが私とアイスランド音楽の決定的な出会いで、このフェスで完全にアイスランドの、レイキャビクの音楽シーンの虜になったのだった・・・。


 (2011年)7月にマックを買い換え、ファイルの掃除をしていた時に出てきたのが、2003年に私が初めてアイスランド・エアウエイブスを見た時の見聞記。フェスの醍醐味、面白さは今でも不動ですが、やはり最初の体験は強烈で、その驚きが文章によく出ていて分かりやすい。私自身とても懐かしく楽しく読むことができたので、ここにICELANDiaブログ読者のみなさまにもお裾分けしたいと思います。

 いつも文章が長くて恐縮ですが、この見聞記は7千字ほどあるので、3-4分割して出しますね。で、お断りしておきたいことは、この見聞記は後半の方が面白く、前半は、場所確認やら雰囲気確認で精いっぱいだったような感じ。なので、時間がない方は、後半のみをどうぞ。

2003年Icelandic Airwaves見聞記

まえがき:
 上記タイトルを見て「えっ?」と疑問に思った方、大正解です!正確には「Iceland Airwaves(アイスランド・エアウエイブス)」であり、「Icelandic Airwaves(アイスランディック・エアウエイブス)」ではありません。
 そうなんです、私も見聞記を読み直して苦笑しまくりましたが、こんな感じの小さな間違いがあちこちに!固有名詞の読み方なんてメチャクチャですが、これもアイスランドへ行き始めた2003年の私自身を映す鏡だと思うので、そのままにしておきます。(この見聞記の時は3度目の訪氷なんですけどね・・・)
 注釈は入れず、間違いは最後にざっくりとまとめて正します。文中に「間違い#1」等も書かないので、基本的には読み流してくださいね。
 ちなみに、2003年に出演したバンド数は150組弱だったはず。現在は250組以上です。
 ということで2003年のフェス感想文をどうぞ!

2003年10月15日(水)
 アイスランド音楽を調べるようになって以来、Airwavesという音楽祭がずっと気になっていた。どうしても見たい!絶対に見るぞ!と心に誓っていたので、この時期の訪氷が実現し、本当に本当に心からうれしかった。
 オープニングはキャピタル(kapital)というクラブで、ここで今夜、私がアイスランドブルーというアイスランド音楽と文化を紹介するイベントに関わった際に日本に招聘したDJアルニ・クリスチャンソンが、ザ・ズッカキス・モンディアーノ・プロジェクト(TZMP)というユニット名で友人と共に出演する。アルニからは昼間電話で「最高のステージにするから、ぜったいに見にきて」と言われていたし、言われなくとも見に行く予定だった。キャピタルには出演予定の1時間前午後10時に到着した。
 昼間、場所を確認しておいたので、問題なくそのクラブは見つかったが、何やら私の前にガタイのデカイ二人組が同じ方向へ歩いていく。
「あの人達も同じ会場へ行くみたい。あんなに背が高いアイスランド人ばかりでごった返していたらどうしよう。華奢な日本人の私はつぶされるかも・・・」と心の中で少し心配していると、その二人組のひとりが振り向いて、「悠加じゃないか。ウエルカム・バック!」と叫んだ。
 あれぇ、ドッディにラッシだ。彼ら二人はアイスランドブルーで招聘した目玉バンドでもあり、アイスランドではかなりの人気を誇るトラバントのメンバーだ。
 「絶対に会うと思ってたんだ。アルニが出演するだろう。僕らも見にきたのさ」と。
 ガタイの大きな外人につぶされるどころか、彼らなら私がつぶされないように守ってくれるだろう。心強い限りだ。パスを見せて中へ入ると、会場はまだガランとしていた。
 DJブース前の席でアルニが見つかったので「ステージらしきものもないけど、どこでパフォームするの?」と聞くと、「DJブースの横で、勝手に歌えって感じみたいだ。これには僕も驚いたよ。」
 ここはごく普通のクラブで、客席から一段高いところにステージがあるわけではない。驚いたことに、出演者を照らすスポット照明さえなく、正直なところセッティングとしてはお粗末である。しかし出演者はそんなことにめげず次々とパフォーマンスをこなしていく。
 「今日は知り合いの全員に声をかけてきたから周囲は友だちばかりだ。昨日から気合いを入れてリハーサルもしてきたし、絶対に楽しいパフォーマンスにするから」と再度念を押された。
 私が会場入りした後からどんどんと入場者が増え、アルニの出番の頃には身動きが取れないほどの人出となった。そこには数人の地元音楽業界関係者や元シュガーキューブスのメンバーの顔も見えた。
 TZMPはテンガロンハットをかぶった二人組が織りなすジョーク・ユニットで、アルニの相棒はアイスランド屈指のジャズ評論家を父親に持つステイン・リネット。友人に声をかけまくったというだけあり、彼らの出番になると客席総立ちで、すごい喝采となる。30分程度の短いパフォーマンスの中には、ラップ、ヒップホップからバラッドまでの多彩な音楽を盛り込み、熱のこもったそのステージは楽しくさわやかなものだった。
 この後はキャピタルに居残るか、Sirkus(スィラカス=サーカスの意味)でDJを聴くかの選択があったが、翌日からハードスケジュールになるため、この日は軽いジョブということで、アルニのパフォーマンスでお開きにすることにした。
 「業界関係者も、欧米の観光客も、明日から飛んでくる人が主だから、オープニング・ナイトの水曜はこんなもんなんだよ」とアルニ。
 「人気バンドが演奏する日に重なると、僕らのライブなんか見に来てもらえなくなるから、僕らにとってはこの日がベストなんだ」。なるほど。
#会場#
*Kapital(キャピタル):港のバス停から徒歩1-2分。ダンス・フロアのあるクラブで、特に何の変哲もない若者の溜まり場という感じ。

*Sirkus(スィラカス) :夕方から開店する飲み屋。ブルーの空をバックにパームツリーが青々と一面に描かれている外観を見ると「何じゃこりゃ?」という感じがしないでもないが、中に入るとキッチュでそれなりに楽しい。というか”悪趣味”がこの店の魅力なのだ。
アイスランドのクラブはどこもそうだが、ドリンク類はカウンターへ自分で買い出しに行くこと。ここは裏庭が広く平日はフリマが開かれていることが多い。ミュージシャン御用達店で私はここでシガーロスのヨンシーに会った。トラバントやシンガポール・スリングの面々もよく行くそうだ。

2003年10月16日(木)
 この日に欧米の関係者がドドっと飛来するとはいえ、いきなり会場を9か所に増やすことはないでしょ!と言いたい。うれしい悲鳴ではあるが、見たいアーティストが重なるので、ホント、選択に困る。
#会場#
*11 :ロイガヴェーグル通りから一歩だけ外れたところにあるカフェ/バーで、2階建て。こんな狭いところでどうやってライブをするのぉ?と不思議。ハードロック系が得意で、この日もそういったバンドが出演していた。
*Grand Rokk(グランドロック) :レイキャヴィーク市内の名門ライブ・ハウス。1階がバーで、2階がライブ会場。1階にはチェスボードがあり、どちらかというと中高年男性向けの雰囲気。ビョークがパンク娘だった80年代からのライブハウスなので、ビョーク・ファンは立ち寄りたいところ。11から歩いて2-3分のところにある。この日のラインアップは、エレクトロ系やポップなものが中心だった。
*Gaukurinn(ガウクリン) :港に近いここは市内でも大きめのライブハウスで、通常はかなり名の通ったバンドが出演する。2階にはプールテーブルやゲーム機があり、ライブの合間に一休みするのにもってこいだ。私はよくここでカラシのメンバーを見かけた。この日はヒップホップ、ラップ系の出し物。
*Idno(イズノ) :チョルトニン湖の湖畔に立つクリーム色っぽいきれいな建物がこの会場。普段はカフェ付き劇場として使用されている。劇場であることを生かして、この日はヴィデオ上映と共にノイズ・アーティストのパフォーマンスがあり、良い意味でレイキャヴィークのアンダーグラウンド的な雰囲気を漂わせていた。
*Nasa(ナサ) :国会議事堂と同じ公園に面した巨大ディスコ/クラブで、売りは最新音響機器を設置した最先端ベニューということだ。しかし六本木の最新店と比較してはいけない。あくまでもアイスランド国内が基準での話。実質的にここがメイン会場で、人気の高いアーティストのライブがここ。
*Vidlin(ヴィダリン) :若者がスケボーを楽しむ広場の一角にある。民家を改造して使用していることがすぐにわかる外観と内部構造で、
通常はカフェ/レストラン。この日はアンビエント、ポップ系のアーティストが揃っていた。
*pjod……….(ヨズレイクスフキャタリン??):国立劇場の地下にある、薄暗いディスコ。真ん中にミラーボールの光るダンスフロアがあり、その周囲をテーブルが取り囲む。モロに70-80年代ディスコで、かかる音楽もその時代のものが多い。この日はエレクトロ・ポップ系の出し物だった。
 この日は見たいライブがグランド・ロック、ナサ、ヴィダリン、ヨズレイクの4か所に散らばっているし、時間帯が重なるものがあり、心は千々に乱れる。それにライブは往々にして開演時間がずれるため、開演予定は未定で決定ではないことも頭に入れておかなければならない。そうなると、絶対に見逃したくない!ものを優先することになる。

 ということで決定したのが以下のスケジュールだ。
 21:00 Kira Kira
 22:30 Eivor Palsdottir (Nasa)
 23:15 Leaves (Nasa)
 00:00 Eberg (Vidlin)

 60組以上のアーティストがライブを行っているのに、たった4組はないだろうとは思いつつ、見たいものが同じ時間に重なるため、泣く泣くの選択なのだ。キラキラとエイヴォールの合間にゴウクリンやキャピタルなどにも顔を出して、何をやっているのかも伺ったが、やはり私の音楽的な趣味としては上記に落ち着いて正解であったことだろう。

 キラキラというのは文字通り日本語のキラキラという意味だ。日本に3カ月居たことのあるクリスティン・ビョーク(本来の発音はビヨルク)は、キッチン・モーターズという音楽とビジュアルの芸術集団の一員であり、これが私にとって初めてのノイズ体験となった。ノイズというと地味なステージが多いそうだが、電飾のついたテンガロンハットに雪のように白いドレスをまとったクリスティンのパフォーマンスはビジュアル的にも楽しめるものがあり、バックにはバークリー音楽院出身のヒルマー・イエンソンというエクスペリメンタル・ジャズの名ギタリストがつき(ヒルマーもキッチン・モーターズの一員)、その演奏も非常にクオリティが高く大満足。当初は顔見知りなのでクリスティンのパフォーマンスを見に行くという感じであったが、コンセプトも音楽もたいへんに興味深く、次にエヴォールが控えていなければもう少しこの会場に留まっていたかったほど気にいった。

 エイヴォール・パルスドッティルはフェロー諸島出身の天才女性歌手で、ソロ・アルバムを録音したのが16歳の時。現在は二十歳でレイキャヴィーク市内に住み、ヨーロッパ各地で音楽活動を続ける期待のアーティストだ。レイキャヴィークにしてはだだっ広いナサという会場は、必ずしもエイヴォールに合っていないが、会場も出演日も主催者側が決定するので仕方ないのだそうだ。しかしノリノリのロック系が大半を占めるナサの出し物の中で、エイヴォールのような”聴かせる”歌手をこの会場にもってくること自体が、いかに彼女が注目されているか
のバロメーターでもある。
 「彼女と普通に話しているとまだ幼いけれど、ライブでは幾度となく感動させられたし、歌っている時の彼女はピュア・ソウルに変貌する」と、12Tonarのオーナーでもあり彼女の2枚目のソロ・アルバムをプロデュースしたラゥルス・ヨハネソンは言っていた。
 年齢不詳の成熟した歌声と、音域の広さ、卓越した歌唱力で、この女性が音楽アーティストとして一生を送ることは間違いないと見た。国際的な評価につながるかはこれからの成長次第だろう。

 リーヴスは2002年に国内デビューし、イギリスでも彼らのアルバムはリリースされている。レディオヘッド、コールドプレイなどと比較されることが多く、アメリカでも注目されつつあるレイキャヴィーク出身のバンドだ。彼らのライブ演奏がBBCのサイトに何曲かあり、それがかなり気に入っていたので是非生で聴きたかったのだ。期待が大きかっただけに、こちらは可もなし不可もなしという手堅い線で落ち着いた。
 実はナサでタバコの煙にやられて目が痛くなり、どうしてもコンタクト・レンズを外さなくてはならない状況に追い込まれて、次なるイーベルグは見逃してしまったのだが、彼はアイスランド出身ロンドン在住アーティスト。このギグを見た友人によれば、イーベルグ自身よりもバックでチェロとヴォーカルを担当していたバードというイギリス人女性の方がよかった・・・というよりも真ん中にいる男性が中心人物であるとは気付かないくらい、バードの活躍の方が目立ったそうだ。ちなみに、バードはソロ・アーティストとしてEPを出している。(次回に続く)

訂正まとめ:
正:カピタル 誤:キャピタル
 アイスランド語は基本ローマ字読みなので Kapitalはカピタル。このクラブは消滅。
正:ラッキ 誤:ラッシ
 今や芸術家として成功しているラグナル・キャルタンソンのこと。
正:シルクス(スィルクス) 誤:スィラカス
 伝説的極北のトロピカル・バー。ビョークが出入りしていたことでも有名。
正: Gaukurinn(ゴイクリン)  誤: Gaukurinn(ガウクリン)
 現在のSodomaの下の部分。以前は一階と二階がつながっていたけれど、現在はふたつの異なる場所として運営。
正: Vidlin(ヴィズリン)  誤: Vidlin(ヴィダリン)
 今は閉店してしまってない。バーでした。
正:未だ名前が覚えられない 誤: pjod……….(ヨズレイクスフキャタリン??)
 2010年はショーン・レノンの誕生日会をやった場所だった。
正:ヒルマル・イエンソン 誤:ヒルマー・イエンソン
正:アイヴォール・パルスドッティル 誤:エイヴォール・パルスドッティル
 当時はエイヴォールと呼ばれていたけれど、数年後にフェローの発音に戻してアイヴォールとなった。
 この時の彼女のライブは映画『スクリーミング・マスターピース』で垣間見ることができます。その数年後に来日。
正:エベルグ 誤:イーベルグ
 日本では「エバーグ」と表記されているようです。
  それにしても、2003年ってなつかし〜!見聞記は次回の方がグッと興味深くなると思いますのでお楽しみに♪ (小倉悠加/ Yuka Ogura)

よかったらシェアしてね!
  • URLをコピーしました!
  • URLをコピーしました!

コメント

コメントする

目次